先日、クリニックでお昼休憩をとる時間が取れそうになかったので、患者さん宅へ向かう道中で和食屋に立ち寄りました。
そこで、アイスクリーム頭痛についての一言コラムが壁に貼ってありました。
同行していた永井看護師とこれが話題になり、せっかくなのでアイスクリーム頭痛について調べてみました。
「アイスクリーム頭痛」って正式名称?
以前はアイスクリーム頭痛と言われていましたが、
現在の正式名称は、国際頭痛分類(ICHD-3)における 「寒冷刺激による頭痛(Cold-stimulus headache)」 です。
そもそも頭痛って何種類あるの?
「頭痛」と一言でいっても、その原因は実にさまざまです。
- 片頭痛や緊張型頭痛など、頭痛外来でよく診るもの
- 命に関わるくも膜下出血
- さらには風邪や二日酔い、眼鏡やゴーグルの締め付けでも頭痛は起こります
これらすべてを体系的にまとめたのが、「国際頭痛分類(International Classification of Headache Disorders:ICHD)」 です。
掲載されている頭痛疾患は、なんと300種類以上。頭痛診療をする医師が拠りどころにしている、頭痛診療のバイブルです。
非常に細かく診断基準が書かれており、診断をつけるときは、どの項目を満たすかということを考えながら診療しています。
2025年現在、最新は 2018年刊行の第3版(ICHD-3)です。
「アイスクリーム頭痛」も分類されている
この分類には、身近でユニークな頭痛もたくさん載っています。
- かき氷やアイスで頭がキーン → 「寒冷刺激による頭痛」
- 二日酔いでの頭痛 → 「遅延型アルコール誘発頭痛」
- きついゴーグルを装着したときの頭痛 → 「頭蓋外からの圧迫による頭痛」
「そんな頭痛、治療いらないでしょ!」と思われるかもしれませんが、それで正解です。
自然に治る頭痛をわざわざ治療する必要はありません。
逆に、分類によって「これは放置してはいけない頭痛」も明確になるのです。
寒冷刺激による頭痛(旧・アイスクリーム頭痛)の基礎知識
疫学
- 一般人口の 30~40%が経験 するとされる
- 小児・若年者に多い
- 偏頭痛を持つ人では発生率が高い
原因
- 冷たい刺激で口蓋や咽頭の血管が急激に収縮・拡張
- その変化が三叉神経を介して痛みとして脳に伝わる
検査
- 基本的に不要。
- 冷たいものを摂取 → 数秒~数十秒の頭痛 → 自然軽快、という典型的経過で診断
治療
- 自然に軽快するため特別な治療は不要
- 口を温める、冷たいものをやめることで改善
予防
- アイスや冷たい飲み物を一気に食べない
- 舌の上で少し溶かしてから飲み込む
- ストローを使うと口蓋を冷やしにくい
まとめ
- 「アイスクリーム頭痛」という呼び方は有名ですが、正式には 「寒冷刺激による頭痛」。基本的には検査も治療も不要です。
- 国際頭痛分類は300種類以上の頭痛を整理した大事な「辞書」です。
- 私のPCには、最新版ICHD-3日本語版が入っており、難しい頭痛を見たときにはいつも確認しながら診療するようにしています。
参考文献
- Headache Classification Committee of the International Headache Society (IHS). The International Classification of Headache Disorders, 3rd edition (ICHD-3). Cephalalgia. 2018;38(1):1-211.
- 日本頭痛学会. 国際頭痛分類 第3版 日本語版. 医学書院, 2018.
- Selekler M, Budak F, Uçar C, et al. Ice-cream headache: prevalence and risk factors. Cephalalgia. 2004;24(7):594–597.
- Hanci D, et al. Ice cream headache revisited: An experimental human model. Cephalalgia. 2016;36(5):452–459.
