アルツハイマー病の新薬「レカネマブ」


アルツハイマー病の根本原因は、脳にアミロイドβタンパクが沈着することにあると言われています。これをアミロイドカスケード仮説と言い、おそらく正しいとされています。

アルツハイマー病を治療するには、このアミロイドβタンパクを取り除けばよいのではないか?と多くの専門家たちは考え、アミロイドβに対するワクチン療法や抗体療法の開発がすすめられてきました。

2023年9月、レカネマブ(商品名:レケンビⓇ)という、日本とアメリカの製薬会社が共同開発した新薬が、アルツハイマー病の症状の進行を抑えることが期待され、厚生労働省で使用が承認されました。

当院には認知症患者が多く、複数のご家族から、「新しい認知症の薬が出たみたいですね~」と言われます。早く現場でも使えるといいですね。

効果はどれくらいなのかというと、レカネマブを使うと、偽物の薬(プラセボと言います)を使わない場合より、「CDR-SBという認知症の重症度を測るテストの点数が、1年半で0.45ポイント改善しました」というものです。

0.45ポイントが、実際に、家族や医療者が、認知症が改善したと感じるかどうかといえば、劇的には感じないかもしれません。

だいたい1~2ポイントくらい改善しないと、周囲の人からみて、ああ認知症が良くなってきたなと感じることはないと言われています(J Prev Alzheimers Dis . 2022;9(3):507-522. doi: 10.14283/jpad.2022.41)

ただ、改善が0.45ポイントというのが、複数の患者さんの平均であるので、すごくよくなった人も、それほど良くならなかった人もいるでしょうから、劇的に改善する人もいるのかもしれません。もしくは、1年半ではなく、もっとなが~く使えば、もしかしたらもっと劇的に認知症が改善してくるのかもしれません。この辺りはこれからレケンビの使用が増えていく中で、データがでてくると思われます。

レカネマブを使用するには、患者が、本当にアルツハイマー病なのかどうか、別の病気ではないか、しっかりと診断することが大事です。また、非常に高額な薬ですので、医療経済を考えるとどんどん使うわけにはいかず、しっかりと適応を考える必要があると思われます。

脳神経内科の疾患は、治らない病気が過去は多かったですが、少しずつこのような抗体医薬など新しい薬が出てきてますね。

在宅医療の現場でも、実際に新規薬剤が使用できるようになる日が来ればよいですね。


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